■はじめに
南海トラフ地震のように、太平洋沿岸部を中心に複数の府県で大規模な被害が想定される地震が起きた場合、被災地同士での相互応援が難しくなる可能性があります。内閣府の「南海トラフ巨大地震の被害想定」によれば、被害規模は広範囲かつ膨大になり、他の県から資材・人員が十分に回せない状況も懸念されています。
さらに、岐阜県自身も強い揺れや土砂災害などの被害を受けるリスクがゼロではありません。こうした状況下で、自県における応急仮設住宅の確保を「県内の力だけで進めなければならない」ケースが十分に想定されるのです。そこで全国木造建設事業協会(以下、全木協)は、災害時の木造応急仮設住宅体制を整えるために岐阜県内の施工業者と連携を図る動きを加速させています。
フクタハウスは、この取り組みに参加する一社として研修に参加し、もしものときに備えた準備を進めています。本記事では、岐阜県が自らを守るために必要な応急仮設住宅体制の背景と、フクタハウスの取り組みについてご紹介します。
■なぜ岐阜県が“自前での災害対応”を求められるのか
1.広域被災のリスク
南海トラフ地震は、東海・近畿・四国地方など複数の県にわたって甚大な被害をもたらす可能性があります。大規模災害時には、被災していない地域からの応援が重要ですが、もし周辺の県も同時に被害を受けていると、資材・人材の相互応援が十分に期待できないことが考えられます。
2.岐阜県自身も被害を受ける可能性
岐阜県は海沿いではないため津波の被害こそ少ないとみられますが、強い揺れによる家屋被害、土砂災害、ライフラインの寸断などのリスクは残ります。県外からの支援が届くまでに時間がかかれば、岐阜県内の被災者向けに応急仮設住宅を建てることも、県自らが主体的に動かなければ進みません。
3.行政計画における想定
岐阜県や市町村の地震防災計画・被害想定資料でも、「複数の自治体が同時被災となるケース」や「山間部での土砂災害」が重なる状況が示唆されています。その結果、県内で必要となる応急仮設住宅の戸数が大幅に増加し、外部からの支援に頼るだけではカバーしきれない可能性があるのです。
■全木協が岐阜県内で推進する“木造応急仮設住宅”体制
1.木造ならではの柔軟性・施工性
全木協は、木造住宅の普及や技術革新を全国に広げるとともに、災害時の応急仮設住宅建設にも力を入れています。木造は資材の流通量が比較的多く、短期間で組み立て可能なメリットがあるため、被災直後の混乱した状況でも比較的対応しやすいとされています。
2.岐阜県内事業者との連携強化
今回、岐阜県内の施工業者が協力して取り組む背景には、「県内で完結する災害対応」を可能にするためのネットワーク作りが重要だという認識があります。複数の業者が結集して施工・資材調達・運搬を分担し、数多くの応急仮設住宅をできるだけ早く建てることを目指しています。
3.研修で共有された事例・課題
全木協が主催する研修では、過去に起きた災害時の応急仮設住宅の事例をもとに、被災状況の違いや資材・人員不足の問題点などを学びました。さらに、県内業者同士が顔を合わせながら「実際に起こりうる課題や施工プロセス」を検討し合うことで、平時からの準備を具体化していくステップが始まっています。
■フクタハウスの取り組みと今後の展望
1.施工の実績を活かす
フクタハウスは、岐阜県関市を拠点に自然素材や高い施工品質を重視した家づくりを行ってきました。こうした経験やノウハウが評価され、今回「災害時の木造応急仮設住宅対応施工業者」の一社として参加しています。
・スピードと必要な品質の両立
応急仮設住宅では、短工期に加え最低限の住環境が求められます。フクタハウスは日頃の施工体制をベースに、災害時でも柔軟に対応できる準備を進めています。
2.研修を通じた県内連携の強化
全木協が主催する研修に参加し、過去の事例や施工手順、資材確保の課題などを学ぶことで、他社との連携ポイントを具体的に把握する機会を得ています。今後は定期的な情報交換や共同訓練を重ね、いざというときに迅速かつ円滑に動けるネットワークを構築していく予定です。
3.“地元の力で県内を守る”という意識
フクタハウスは長年地域密着で家づくりを行ってきましたが、災害対応を「県内完結」で行う意義を改めて感じています。外部からの支援を待つのではなく、岐阜県内の企業や行政、団体が一体となって住まいを確保していくために、これからも準備と連携を進めてまいります。
■まとめ:岐阜県で起きる災害を“県内の力”で乗り切るために
南海トラフ地震をはじめ、大規模かつ広域的な被害が想定される災害が起きたとき、他県からの応援がすぐに届かないケースは十分に考えられます。そのため、岐阜県内で必要とされる仮設住宅を、県内の施工業者だけで迅速に建設できる仕組みづくりが急務です。
全木協による研修や事例共有は、この“自立した災害対応”を可能にするための大きな一歩と言えます。フクタハウスは、この動きに参加する企業として、木造住宅の施工経験を活かし、もしものときにスピーディかつ適切に応急仮設住宅を供給できる体制づくりを進めていきます。平時のうちに培う協力体制こそが、本当に災害が起こった際の大きな支えになるはずです。
“岐阜県の災害は岐阜県で解決する”という覚悟が、生まれ育った地域を守る原動力になる。
私たちフクタハウスも、その一端を担えるよう、これからも研鑽と準備を怠らず邁進してまいります。